"品質・チーム・事業戦略のすべてを満たし"成功に導く | 10Qs to 田辺めぐみ(SparkJoy)

"品質・チーム・事業戦略のすべてを満たし"成功に導く | 10Qs to 田辺めぐみ(SparkJoy)

[#1]メルカリ・DeNA等でプロダクトマネージャー・プロダクトオーナーを務めた田辺めぐみさんに10個の質問に回答いただきました。

2021/10/12

10 Questions to Product Manangers は、Medyを運営するSpectra浅香がプロダクトマネージャーの方に「キャリア」「初期の学習方法」等、10個の共通質問をインタビューし、プロダクトマネージャーに対する理解を深める連載企画です。(参考:#0 企画概要)
初回はDeNA・メルカリなどでプロダクトマネージャー・プロダクトオーナーを務めた田辺めぐみさんにインタビューさせていただきました。
現在はフリーランスとして多数の企業に関わり、採用・育成・コミュニティ運営など多角的にプロダクトマネージャーという職種に接点をもつインサイトから、プロダクトマネージャーについて考える内容となっています。

Profile

田辺 めぐみ ( @tanabemegumi )
2006年にNTTデータに入社しKDDI情報系システム案件をSE・企画営業として担当。2011年からDeNAのソーシャルゲームに携わりプロダクト責任者として、コンテンツ戦略・中期計画・施策検討・分析・実行を行い、MAU数はモバゲー内で1位にまで成長。
その後、スマートエデュケーションにて子供向け知育アプリのプロダクト責任者、ストリートアカデミーにてC2Cのスキルのフリーマッケットのプロダクト責任者を歴任。
2015年からメルカリに入社後は、子会社のソウゾウの立ち上げやメルカリ アッテのプロダクト責任者を経て、メルペイでのオンライン決済、OMO案件等のプロダクト責任者を担当。
2021年1月から株式会社Sparkjoyを設立し、フリーランスやPMギルドにて新規プロダクトやプロダクトグロースの支援に従事。

10Questions

1:Role (担当・役割)

昨年秋にメルカリを退社してからは、フリーランスのプロダクトマネージャーとなって、下記3つを主に担当しています。
①プロダクト開発
いわゆる一般的なプロダクトマネージャーに近い業務で、プロダクトUX検討,開発仕様の作成などをやっています。
②コンサルティング
事業戦略やプロダクトマネジメント手法、プロダクトマネジメント体制を策定するための採用戦略等、幅広くコンサルティングを提供しています。
③プロダクトマネージャー育成
企業向けに研修プログラムの提供や、プロダクトマネージャーを目指す方のメンタリング等を行っています。
その他にも、Udemyでの講座や、プロダクトマネージャーコミュニティの運営などもやっています。

2:Background (プロダクトマネージャーになるまで)

大学卒業後、新卒は大手SIerにSEとして就職し、新規案件や機能拡充などを担当していました。
事業性質上、プロジェクト管理や要件定義が主な仕事となって、もう少しUXやサービス自体の設計を考えたいという希望から、企画営業に社内でジョブチェンジしたところがルーツになるかと思います。
企画書・提案書などを作ることも多く、プロダクトマネージャーに親しいところはあったのですが、当時はtoB向けにサービス開発をすることがメインで、「コンペの形を通してわかりやすいメリットでカウンターのお客さんをどう落とすか」という観点が基本的でした。
個人的には、数値がお客様の声であって良いものをつくればビジネスが大きくなっていくという感覚を味わいたく、2011年にDeNAに転職しました。
そこからが、現在のプロダクトマネージャーのような働き方になったタイミングです。
DeNAではソーシャルゲームのプロダクトマネージャーやプロダクトオーナーとして、農園ホッコリーナなどモバゲーのタイトルを担当し、失敗も繰り返しながらベンチャー・スタートアップ的なグロースを経験しました。
その後、今後の流れとして主流になると考えていたアプリ開発に携わりたく、教育系事業を展開するスマートエデュケーションなどを経て、メルカリに転職しました。

3:Definition (プロダクトマネージャーとは)

当時は、
  • プロデューサー:全体統括として戦略策定・リソース調達をして最終成果物を管理する
  • プランナー:企画や施策を考えてステークホルダーと体現してプロダクトを作り上げる
  • ディレクター:スケジュールやコミュニケーション等の進行管理を行う
といった役割に分割されていたものが、1つにまとまってきた印象があります。
そういった背景も含めて、「プロダクトの成功に責任をもつ人」がプロダクトマネージャーだと思います。
  • プロダクト品質
  • チーム
  • 事業戦略
の3要素を多面的に満たして、プロダクトを成功させることが求められている。
どれか1つではなく、すべてを満たさないとプロダクトの圧倒的成長はないと思うので、「何をどう作るべきか」を決め、「チームを組成して」、「求められている品質のプロダクト」を提供し続けて、成長していくことが重要だと考えています。

4:Learning (初期にどう学習をしたのか)

前提として、当時は前述の通り"プロダクトマネージャー"という職種はまだ浸透していなかったと思います。
求められている要素については、基礎部分であるプロジェクト管理とインターネット・WEBの知識は、新卒時の研修で学んでいたことが大きかったと思います。スケジュール策定・要検定義・要求仕様書などをシステムと絡めて管理することはSIerで学べていました。
同時にビジネススクールにも通っていたので、マーケット観点からのビジネス構築や、戦略策定などは、社会に出て早いタイミングから学習していました。
その後の実務や実体験でいうとDeNAでの経験が大きかったと思います。
ソーシャルゲームのプロダクトオーナーを務めた際に、かなりストレッチした目標をもらうことが多くて…
けど、実例やどういう風に考えてチームの中での自分の役割を決めて達成していくかという部分について、体系立った書籍や文献はほとんどありませんでした。
自分で考えたり実践してみたりすることはもちろんのこと、少し毛色や働き方の違うアクセンチュアでITコンサルをやっていた先輩などに聞くようにしていました。
また、実は一度プロダクトオーナーをクビになっていて…
改めてメンバーとしてプロダクトに関わってみて、プロダクトオーナー・プロダクトマネージャーに求められていること・責任について、分かったこともあります。
とにかく失敗しながらでも、周りに聞きながら行動をとにかくして手数を多くしていたことが良かったかなと思っています。

5:Credo (信条・マイルール)

特に「その組織・チームでつくる」ことを重視しています。
Value Propositionにおいても、プロダクトビジョンは会社のビジョンに紐づくので、なぜその会社がそのプロダクトをやるのかということは非常に大事です。
また、チームという観点でみたときに、プロダクトマネージャーが考えたもの・言ったものを作るだけの組織は、プロダクトのアッパーが決まってしまうと思います。プロダクトマネージャーのスキルや考えで再現できるものまでしか作れません。
ビジョンのもとに、プロダクトマネージャーに依存せず、有機的にチームとして良質なものを作る体制や仕組みを構築することが自分の中で大事にしていることです。

6:Joy (やりがい・喜び)

やっぱり一番嬉しいのは、事業の目標を達成したときですよね。
その他には、自分の作ったサービスを使ってくれてるのを見たときは、ユーザーにインパクトを与えられたのを実感できるというのはありますね。
電車など公共交通機関で、作ったサービスを使ってくれているのを見るととても嬉しくなります。
知人が「toCはロマンがあるよね」と言っていたのですが、個人的にもそういった思いがあって、不確実性が高い一方で、toBよりもコントロールできるパラメータが少なくプロダクトの力で勝負という醍醐味があるかなと思っています。

7:Requirement (求められるもの)

現在、フリーランスで働いていて、戦略コンサルタントの方とご一緒する機会が多くて。
(競争優位性を構築するための)DX,OMOといった分野になってくると、プロダクト自体が会社の戦略になるので、ITコンサルとプロダクトマネージャーが競合してくるのかなと思っています。
上位レイヤー・上流側の役割がより求められるのかなと。例えばマッキンゼーのようなコンサルティングファームもプロダクトマネージャーの採用を強化しています。
その他の動きとしては、他職種からプロダクトマネージャーになる人が増えていくとも思っています。少しずつ事例も増えてきて、プロダクトマネージャーなるものが体系化されていくのではないかなと。
そこにあたって、現状のフワッとした職務で一律で"プロダクトマネージャー"という表記のままだと、採用がネックになります。そこでターゲットやジョブディスクリプションを分かりやすくするために、職種が細分化されていくのかなと思います。現在増えてきている、PMMやTPM以外にも分かれていくのかもしれません。

8:Wow (最近のWow・注目していること)

Axie InfinityというNFTゲームに注目しています。
8月の収益が約400億円という額もすごいですが、フィリピンなどでは生計を立てられるような人が出てきている。メタバースやGamiFiなどの、今後の足がかりになるかもしれないと思っています。
DeNAの時にソーシャルゲームを作っていましたが、リッチ化が進む中で、単にバトルの時に手元のカードを選ぶだけという初心者でも分かりやすい操作性になっています。一方で、キャラクターの配置やキャラクターの属性によって強さが違うなどのやり込み要素もあって面白いです。
さらにスカラーという、自分のキャラクターをレンタルして、稼いだ金額をシェアする付随したサービスなども出ていて今後の展開が楽しみです!

9:Creator Economy (クリエーターエコノミーについて)

プロダクトマネージャーはプロダクトを創作し伸ばしていくので、クリエーターでもあるかなと思っています。
そういった側面からも、クリエーターの方の活動の可能性を広げるクリエーターエコノミーについてはポジティブに考えています。
知人にイラストレーターやデザイナーが多いのですが、スキル・才能があるけど、営業やプロモーションとったビジネス活動が得意でない人はやはり多いです。
正しく、「良いクリエーターが知られる」「良いクリエーターの良質なスキル・作品が届く」ことが必要だと思っています。
Sozi社が展開するpibのように、作品・クリエイティブをベースに良質なクリエーターが知られて、影響力を持っていく仕組みがあると面白いなと考えています。
その他にも、最近ではTwitterの直接課金の流れやアル社のelu、NFTなど、クリエーターの可能性が広がる動きに注目しています。

10:For Beginner (初学者におすすめ)

最後に、運営されているプロダクトマネージャー向けコミュニティでも整理している、初学者の学習におすすめの文献とメソッドを教えていただきました。

■開発手法のフレームワークを知る

■プロダクト開発・マネジメントを知る
特に、Mellisa Perri著の「プロダクトマネジメント」と、宮田善孝著の「All for SaaS」はおすすめです。

■おすすめの実践方法
  • ノーコードツール(STUDIOやGlide)でテーマを決めてアプリを作ってみる
企画~アプリの完成まで一通り経験できます。動画サイトなどを参考に一つ作ってみるとプロダクト作りのイメージが沸きやすいです!単にアプリを作るだけでなく、講座の流れにそって、企画やスケジュールの作成、事業計画のようなものまで一緒に作ってみると、必要な検討内容なども実践的に把握することができるのではないかと思います。

Editor's Comment:編集後記

実は、僕が一番最初にプロダクトマネージャーとして接点をもったのが田辺さんです。(前職の最初のチームが一緒でした。)
SIerでのカチッとした事業開発の経験をルーツとし、ビジネススクールでの体系的知識のインプットと急成長スタートアップでスピーディかつ柔軟にプロダクトを成長させていくというようにミックスさせてきたからこそ、プロダクトの成功におけるこだわりやチーム開発の意味といったものに説得力を改めて感じました。
また、現在は育成・研修を担当されていたり、多数の企業で経営戦略に近いところから関与されていたりもあって、マーケットと実例、歴史と未来の双方からのアプローチでプロダクトマネージャー・プロダクトマネジメントを考えているのが印象的でした。
来年からは、よりディープにプロダクトマネージャー向けコミュニティ・スクール運営等をしていく予定とのこと。10月から開始したトライアル講座は以下のMOSHのページから申し込みいただけます。


その他にも田辺さん、および関連事項にご興味の方は、ぜひこちらから連絡してみてください。

お知らせ

毎週1本(火曜17:00想定)、プロダクトマネージャー・プロダクト開発に対するテーマを発信予定です。
メールアドレスで登録していただくと、記事公開時に同デザインでメールが届きます。見逃さずにいち早く気づけるとともに、メールでも記事を楽しんでいただけます。


感想やコメントなども、ぜひSNSにシェアしていただけたら嬉しいです!

匿名で質問やリクエストを送る

※登録・ログインなしで利用できます

メールアドレスだけでかんたん登録

  • 新着記事を受け取り見逃さない
  • 記事内容をそのままメールで読める
  • メール登録すると会員向け記事の閲覧も可能
あなたも Medy でニュースレターを投稿してみませんか?あなたも Medy でニュースレターを投稿してみませんか?