(2/4) クリエーターエコノミーのはじまり、今後の動向 | Medy制作の背景

(2/4) クリエーターエコノミーのはじまり、今後の動向 | Medy制作の背景

ー 制作・流通の民主化によるクリエーターの増加、クリエーターのビジネスオーナー化、安全性と競争優位の確立。

2021/10/2

Spectraの浅香( @__asachi__ )です。
9/29にリリースした、ニュースレターつき会員制メディア作成サービス「Medy」(メディ) の制作に至った背景について、メディア・情報・広告の観点から、過去現在未来の流れで書いています。
#2である今回は、昨今注目を集める "クリエーターエコノミー"をテーマに、「クリエーターのはじまり、今後の動向」という内容になります。

#3,#4も来週に公開予定です。記事公開を知りたい方、楽に読みたい方は良ければ会員登録をお願いします!(記事と同内容のメールが届きます)

▼#1 はこちら

The Era of "Creators"

大きな流れとクリエーターの増加

インターネット・SNS・スマートフォンの普及によって、人は創造性を発揮しやすくなりました。
また、マスメディアが主な情報接点となっていた際は、供給面が限定されており、一般人が多数の消費者に届けていくことは非常に難しいことでした。自らの個性を使ってビジネスをするにも、大きな資金といった元手や、見出してもらって既存の大きな商流に載せてもらう(ex.事務所・パブリッシャーとの契約)ようなルートが必要となっていました。
一方で供給面が民主化され、さらにはアップロードコストの低下やフォーマットの多角化、大量ユーザーを抱えるプラットフォームやアルゴリズム等を用いたマッチング技術の進歩により、細分化された需給の一致も起こりやすくなっています。いわば、ニッチの成立する余地が増えてきていると思います。
例えばYouTubeでも、自分自身がよく見るのは登録数千~5万くらいのファッションやサッカーの解説系のものなどが多いです。Instagramで参考にするのも、それくらいのレンジのマイクロインフルエンサー的な方でしょうか。(もちろん伸びている途中なだけという可能性もありますが。)
気になって調べたらメンズノンノの発行部数が7.2万部なので、歴史ある全国流通紙に近い規模にまで、多くの個・スモールチームのクリエーターが到達していることになります。
このように消費者層へのリーチ・ビジネス成立の上に、一定数以上のフォロワー(会員・ファン)を獲得し影響力を持ち、誰もが商圏をもつことが可能になっています。
また、コロナが落ち着いた後に、どのような日常に戻っていくか未知ではありますが、リモートワーク・授業、非対面型ビジネスなど、インターネットの恩恵である地理的・時間的制約の撤廃には、まだまだ余地があることが判明したタイミングでもあると思います。
技術も常に進化しており、製作・創作コストは日に日に下がっていくので、発信者・クリエーターという存在の絶対数は今後も増加していくのではないでしょうか。

クリエーターエコノミーとは

それこそCMのように、芸能人・セレブリティーを軸に販促行動を行うことは過去より存在していました。
とはいえ、CM等その他マス向け広告のような大規模プロモーションでは、芸能事務所に所属しているような人物が使われることがメインでした。
日本では、2010年代にYouTubeでの広告収益(一般公開は2012年から)やInstagramを中心としてインフルエンサー×PR案件のマネタイズをはじめとして、コンテンツ製作者がサービスでの発信を軸に生計を立てることができるようになりました。ちなみにYouTubeの「好きなことで生きていく」のCMが2014年です。


YouTubeのようにサービス上で収益化できたり、Instagramで影響力をもったインフルエンサーがPR案件以外にブランドなどの他ビジネスをはじめることができたりと、影響力の収益化手段(≒ビジネス成立余地)が増加していったことは大きいのではないでしょうか。
従来から広告・PR・スポンサー契約とクリエーターが客体となるケースやプロデュースのように一部を担うケースはありましたが、コネクションや金額、知識・技術といった制約を超え、自ら実現できるようになったことは、とても大きな意味があると思います。

合わせて、昨今注目されているクリエーターエコノミーについて考えてみます。
今夏に発足したクリエーターエコノミー協会では、
個人の情報発信やアクションによって形成される経済圏
ビジネス情報分析のCB Insightsでは、
創作活動を営む個人が組織などを介さずに直接稼ぐ
と説明されています。
細かい定義はそれぞれですが、
個人的には、自らの意思で自分に適したビジネスモデルを選択して希望するサイズの収益をつくれる状況、および形成される商圏 がコアなのかなと考えています。
(補足)広告モデルやプラットフォームへの依存はクリエーターサイドからすると重大な課題の一つではありますが、良い悪いといった二項対立ではなく、どういった使い方・付き合い方をすべきかという話だと思います。


誰もがクリエーターになれる弊害

発信手段を持ち「届けることができる・届く」ということには、当然ですがメリット・デメリットの双方が存在します。
①公になるということ・拡散性があるということ
(一定以上)個人を特定出来る形で自分の考えをオープンにするということには、誹謗中傷や攻撃のリスクがつきまといます
特にコンテンツが短尺・インスタント化しているSNSでは、コンテキストを省略せざるを得ないケースや、カジュアルに利用するという意味で届く範囲を狭く想定しているケースがあると思います。
一方で、SNSには投稿を拡散することができる機能が基本的に備わっているため、拡散者の意図も交えて広げていくことが可能であり、設定や使い方を工夫しないと自分でコントロールできないことも起こり得ます。(完全にクローズドで使っていても悪意があれば起こりますが、、)
いわば、自費で1部だけ出版したものが、目についた人にコピーされて1万部になって全国に広がっていて、背景や前提を知らない人や悪意のある人にも届き、各地で思惑と違うレビューや悪評が流れる可能性がある、みたいなものでしょうか。
10-20年前はそれがローカルコミュニティに収まっていたかも知れませんが、現在はアクセシビリティの上昇によって広範かつ迅速に広がっていってしまいます。
パッと見つかった公的データでは件数は純増というよりは高水準という形で書かれているのですが、自らの周りでもそういった事象を見かけることは定期的にあるので、規模の大小を問わずインターネットでの誹謗中傷被害はもっと存在するのではないかと思います。
2020年にはガイドラインもつくられ、最近ではTwitterもリプライ範囲制限や非表示機能を実装したり、法律として侮辱罪の厳罰化が検討されていたりするため、サービサーや公的機関などにも対策・整備が求められていることなのだと感じています。

②競争優位性の必要性
クリエーターの(ビジネス)規模拡大の仕組み自体は極めてシンプルです。
多くの人に知ってもらう機会があること (= 潜在層へのリーチを含め、新規顧客獲得手段があること)
コンテンツを通じて、お金を支払ってもらうこと (= 価値を感じて対価を支払ってもらう,その手段があること)
の両者を満たすことです。
※クリエーターとして生計を立てていくというケースを想定しています
そういったベースの中で、誰もがクリエーターになり得るという状況は、結局の所、誰もにチャンスがあり、供給者(比較検討の対象)がたくさんいるという状況です。

多くの人に知ってもらう機会
はTwitter,Instagram,YouTube,TikTokのような圧倒的なユーザー数を抱えるオープンなSNS、およびPixiv,Spotify のような専門プラットフォームによって比較的に得やすくなっています。コンテンツ・消費者のカテゴリやジャンルを絞ったような、濃密なプラットフォームも年々増えてきています。
一方で、アルゴリズムが発達し細かいメッシュで半自動マッチングしてくれることや拡散の容易性があるとはいえ、大量の情報・コンテンツの中から選択してもらうわけなので、選んでもらう理由が重要になってきています。いわば、競争優位が必要です。
(情緒や感覚的なものを含む)品質はもちろんのこと、どのように継続的に選んでもらうか継続的な関係性を築くかもポイントになってきます。前述の通り、消費者は良くも悪くもアテンションエコノミーの中に生きているため、断片的・刹那的な接触では興味関心から押し出されていきます。プロセスエコノミーといった過程やWHYの伝達,共同消費もそういった文脈から、派生したものかと思います。
グリップ、すなわち消費者の心や意識の向き先をキープし続けるには、きちんと自分のコンテンツを届け認知してもらい、継続的に関係性を作れる仕組みが重要です。


今後の流れ

多くの消費者層にリーチができるという点で、SNS・プラットフォームは非常に魅力的な場所です。自分自身も、Twitter等で恩恵を受けていると感じたことは何度もありますし、今回のリリースの際も「多くの人に届ける」ことができました。
一方で、プラットフォームのビジネスモデルに組み込まれる形(= "使われる" )ではなく、戦略的に認知獲得や拡散に"使っていく"ことが起こっているように感じます。
背景には、"プラットフォームとクリエーターの力関係の歪み"があり、「多くのコンテンツ・人を担保するのでプラットフォームドリブンで良い」から「その人の集客力によってプラットフォームの(広告)収益が増えていく」という構造の変化があるのではないかと思います。
また、収益を1つのスポットに置いておくこと、そのルールはプラットフォーム側に裁量があることを考えると、自分のビジネスとして運営していくという選択が出てきます。受ける影響が大きいトップ層は動きが早く、DaiGoさんのDラボ, 西野さんのSalon.jp などは最たる例かと思います。
そういった形で、直接的に顧客とつながる、中間プレイヤーを(あまり)挟まないようなクリエーター・コンテンツ領域のD2C(P2C)は増えていくのではないでしょうか。クリエーターのビジネスオーナー化・マイクロアントレプレナー化のようなイメージです。
SNS・プラットフォームのようなオープンで画一的な仕様や他者との強制比較を受けることなく、個性・魅力・世界観を伝えていくことも容易になります。
さらに言うと、接点をもった興味層を引き込む先、潜在層の段階から育てていく仕組みをもっておくことで、自分のビジネスを構築することに奥行きが生まれます。
また、前述したように誹謗中傷・攻撃、炎上といったリスクから身を守りながらの活動も重要な点です。自身のダメージもそうですし、ブランディングにも関わってくる事柄です。
以前ちきりんさんがVoicyで、有料コンテンツ・コミュニティは「治安」のためのPaywall と言っており、そういった側面では内容に応じた発信範囲の選択も必需で、完全にオープンな発信とクリエーターが相手にしたい方に向けた発信の区別は加速していくのではないでしょうか。

まとめとしてですが、多くの人に届けることが容易になった先に
  • 直接的な接点,流通の仕組み
  • 自分の身とブランドを保てる仕組み
  • 興味関心や熱量をグリップしておく仕組み
  • かんたんに個性やアイデンティティで収益化できる仕組み
  • 多様化したアイデンティティの表現
といったようなもの満たすやり方・満たせるサービスで、クリエーターのビジネスオーナー化が進んでいく、およびそれに対応するようなサービス・ツールが出てくるといった流れが進んでいくのではないかと思います。


おわりに

#1,#2では発信者側をとりまく視点でアテンションエコノミー・クリエーターエコノミーを考えてみる内容となりました。
では、消費者サイドはどうなっていくのだろうか、どうしていくべきなのかといったテーマについて次回の「#3 多様性と不確実、情報過多時代のコンテンツ」で書いていければと思っています。

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